バイオスティミュラント(BS資材)とは?効果ある?肥料・農薬との違いと北海道農業での使い方

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BS資材(バイオスティミュラント)を一言で表すと「ワクチン」です。

この記事では、BS資材の本質的な仕組みと、大規模経営において導入を判断するための基準を整理します。

「なんとなく聞いたことはある」「使ってみたいけど効果の根拠がよくわからない」という方に向けて、現場目線で解説します。

本記事は、私のPodcastで話した内容をもとに、要点を整理して文章化したものです。


目次

BS資材(バイオスティミュラント)とは何か?肥料・農薬との違い

BS資材の正式名称は「バイオスティミュラント(Biostimulant)」。

直訳すると「生物的刺激剤」ですが、この名称だけでは何のことかわかりにくいですよね。まず立ち位置を整理します。

肥料でも農薬でもない「第三の資材」

農薬には農薬取締法、肥料には肥料取締法という法律が存在し、それぞれ厳格な登録制度があります。

BS資材は、どちらの登録区分にも当てはまらない資材です。

市販されているBS資材の中には、肥料成分(窒素・カリウムなど)を一定量含ませて肥料登録を取得しているものもあります。ただし、それは販売上の要件を満たすための手段であることが多く、開発者の主眼は「肥料として養分を補う」ことではありません。

BS資材の本来の目的は、作物そのものの生理機能を引き出すこと。

養分を「補う」のではなく、作物が「本来持っている力を引き出す」という点が、肥料との本質的な違いです。

区分法的根拠主な目的登録要否
肥料肥料取締法養分の補給
農薬農薬取締法病害虫・雑草の防除
BS資材規定なし(自主基準移行中)作物の生理機能強化・ストレス耐性向上不要(肥料登録取得のケースあり)

2025年5月、農林水産省はバイオスティミュラントの表示に関するガイドラインを発表しており、国内でも制度整備が進みつつあります。


なぜ今、BS資材が北海道農業で注目されているのか

一言で言えば、減農薬の潮流が加速しているからです。

ヨーロッパで進む農薬禁止の現実

EUでは近年、残留農薬規制の強化が急速に進んでいます。日本でも現在使用が認められている殺菌剤の一部が、EU域内では使用禁止もしくは厳しく制限されている状況があります。

農薬の新規有効成分の開発には膨大なコストと時間がかかります。既存薬剤が禁止された場合、代替品が出揃うまでの間、使える防除手段がなくなるリスクは現実的です。

▼ヨーロッパの減農薬事情についてはこちらでも解説しています

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北海道の主要作物と農薬規制リスクの現実

北海道の主要作物である小麦・馬鈴薯・タマネギ・大豆・甜菜は、いずれも殺菌剤や殺虫剤への依存度が高い作物です。

欧州の農薬規制の流れは、数年の時間差で日本にも影響を与える可能性があります。

さらに、近年の高温・干ばつ・集中豪雨などの気候変動リスクも、BS資材への注目を高めている背景にあります。

北海道でも、更別村などの大規模産地でバイオスティミュラントの実証試験が始まっており、研究開発は実用段階に入りつつあります。


BS資材の仕組みを「ワクチン」で理解する

BS資材のコンセプトを最もわかりやすく表すなら、「ワクチン(予防接種)」です。

バイオスティミュラントが作物の抵抗性を高めるメカニズム

ワクチンの原理は、本物の病原体よりも弱い刺激を事前に与えることで、体の免疫系を活性化させることです。

BS資材も同様に、作物に対して軽微なストレスシグナルを与えます。そのシグナルを受けた作物は防御反応を活性化させ、本番の病害や環境ストレスが来たときに対抗できる状態を作ります。

この仕組みを「ストレス体制(stress priming)」と呼ぶ研究者もいます。

前提の読み替え:この仕組みはすべての作物・すべての圃場条件に一律に当てはまるわけではありません。土壌環境・作物ステージ・気象条件によって反応は異なります。自圃場での効果は試験区を設けて確認することが望ましいです。

「事前散布」がBS資材最大のポイント

注意点として、BS資材は病気になってから使うものでも、干ばつが来てから使うものでもありません。

効果を最大限に引き出すには、ストレスが来る前に作物の体をあらかじめ整えておくことが必要です。

これはワクチンと全く同じ考え方です。インフルエンザが流行してから接種しても遅いように、BS資材も「使うなら事前」が原則です。


使い方の判断基準と散布タイミング【チェックリスト付き】

BS資材を検討すべき場面のチェックリスト

以下の項目に複数当てはまる場合、BS資材の導入を検討する価値があります。

  • 近年、高温・干ばつ・長雨などの気象ストレスで収量・品質に影響が出ている
  • 防除体系の中に、将来的に使用制限が懸念される薬剤が含まれている
  • 減農薬・環境負荷低減を求められる販売先や認証スキームに関わっている
  • 栽培初期から中期にかけて、スプレー散布の体制がある(複数回散布が前提)
  • 効果検証のための試験区(比較区)を設ける余裕がある

BS資材の散布タイミング目安(作物ステージ別)

BS資材は一般的に、栽培の初期〜中期段階での施用が基本とされています。

ただし資材の種類や対象作物によって推奨タイミングは異なります。以下はあくまで一般的な目安です。

  • 播種前処理(種子コーティングや土壌施用):根張り強化目的
  • 出芽後〜生育初期:ストレス耐性の基礎をつくる段階
  • 病害や高温ストレスが予測される時期の2〜4週間前:事前散布

コスト面の判断基準

BS資材のコストは、液肥の散布コスト(目安として1回300〜1,000円/10a程度)と比較すると高めになる傾向があります。複数回散布が前提となるため、作業コストも含めたトータルの費用対効果で判断することが重要です。

大規模経営で導入する場合は、以下の視点で整理するとよいでしょう。

  • 1ha当たりのBS資材コスト(複数回分)
  • 既存の防除・施肥作業との重複可否(ドローン・ブームスプレーヤーの活用)
  • 試験区での効果確認後に面積を拡大するステップ踏み型の導入

BS資材を導入する前に確認しておくべきこと

製品選択の注意点

現在、市場にはBS資材と名乗る製品が非常に多く流通しています。成分も多様で、海藻抽出物・アミノ酸・腐植酸・微生物資材などカテゴリーが異なります。

「BS資材」という名称だけで製品を比較することは難しく、目的(環境ストレス耐性強化なのか、栄養吸収効率改善なのか)を明確にした上で選ぶことが必要です。

農薬との併用時の注意

注意:BS資材は農薬ではないため、農薬登録はされていません。ただし、農薬との混用を想定した使い方をする場合は、混用による薬害リスクや農薬の登録要件(適用作物・使用回数・希釈倍数・収穫前日数など)を必ず資材メーカーおよび農薬のラベルで確認してください。

混用の可否については、販売元に問い合わせた上で判断することを強くお勧めします。


5. FAQ

BS資材は農薬の代わりになりますか?

現状では「代替」ではなく「補完」と考えるのが適切です。BS資材は特定の病害虫に対する適用登録を持つものではないため、農薬のように「何々病に効く」という確約はありません。農薬が使えない状況への備えとして、あるいは農薬体系を維持しながら作物の基礎体力を底上げする資材として位置づけるのが現実的です。

散布しても効果が感じられない場合、何が考えられますか?

BS資材は効果が数値として出にくく、「悪化しなかった」という形で現れることが多い資材です。散布タイミングが遅かった場合(ストレス発生後)や、圃場の土壌条件・作物ステージとの相性によっても効果の出方は変わります。試験区と対照区を設けた上で複数シーズン確認することが、判断の精度を高めます。

北海道の主要作物への効果データはありますか?

北海道内でも実証試験の事例が出始めており、特に玉ねぎや小麦での検証が進んでいます。ただし、作物・品種・気象条件・土壌によって結果にばらつきがあるのが実態です。メーカーや普及機関から道内の事例データを入手した上で判断することをお勧めします。

まとめ|BS資材(バイオスティミュラント)は「事前に使う」ことで力を発揮する

BS資材(バイオスティミュラント)は、肥料でも農薬でもない第三の農業資材です。

作物にあらかじめ弱いストレスシグナルを与えることで防御反応を引き出し、病害や環境ストレスへの抵抗性を高めます。その本質は「ワクチン」です。

この記事で押さえておきたいポイントを整理します。

  • BS資材は肥料取締法・農薬取締法のどちらにも属さない資材である
  • 注目される背景には、EUを起点とした農薬規制強化の流れがある
  • 効果を引き出すには「ストレスが来る前の事前散布」が絶対条件
  • 液肥より高コストになるケースが多く、複数回散布を前提としたコスト計算が必要
  • 市場に製品が溢れているため、目的を明確にした上で製品を選ぶことが重要

大規模経営で導入を検討する場合は、まず試験区を設けて自圃場での反応を確認することを強くお勧めします。

「なんとなく話題だから」という理由での導入は、コストと手間だけが残るリスクがあります。仕組みを理解した上で、自分の経営課題と照らし合わせて判断してください。

もし、高温対策や病害虫対策として使用したい場合、そもそも基本的な土壌改良をしていないと効果がほとんどありません。睡眠不足の中、栄養ドリンクを飲んでパフォーマンスを上げようとしているようなものです。まずは生活習慣を整えることのほうが大事です。

▼土壌診断を実施して確実にステップを踏んでいきましょう。

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BS資材は使い方次第で、減農薬時代の農業経営における有力な選択肢になり得ます。北海道農業の現場で、この資材をどう活かすかを一緒に考えていきましょう。

Podcast(音声)で詳しく聞きたい方へ

この記事のもとになったPodcastエピソードでは、より実践的な事例や、メーカー担当者から聞いた裏話も語っています。通勤中やトラクター作業中に聞きたい方は、Podcast『土壌医あさひのオモテじゃ語れない農業トーク』もぜひチェックしてください。

この番組は、いわば「ラジオの中の勉強会」。北海道で頑張るあなたと同じ仲間たちの悩みや成功事例を共有しながら、明日からの農業がもっと面白くなるヒントを配信しています。

作業の合間やコーヒーブレイクに、ぜひ気軽に再生してみてください。きっと、新しい発見があるはずです。

各種プラットフォームでマルチ配信中です。

あさひ

私も日々、自己研鑽しています。一緒に農業経営の勝ち筋を考えていきましょう!!

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