【コスト削減】無駄な追肥してない?大豆で根粒菌を最大活用する肥料戦略

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「大豆に追肥した方がいいのか、しない方がいいのか」——この質問は、北海道の大豆生産者から非常に多く寄せられます。

結論から言えば、追肥の要否は根粒菌の着生状況によって変わります。開花期に株を抜いて根を観察し、1株あたりの根粒菌が10個未満なら追肥を検討、10個以上なら窒素を抑えて根粒菌の活性を最大化する——これが基本的な判断ラインです。

本記事では、大豆栽培における追肥判断の具体的な手順と、根粒菌を活かすための窒素管理戦略を解説します。マイコス菌の効果についても、北海道の圃場条件を踏まえて触れていきます。

本記事は、私のPodcastで話した内容をもとに、要点を整理して文章化したものです。


目次

大豆の追肥判断で最初に確認すべきこと

大豆の施肥設計における基本は「窒素は最小限でよい」という考え方です。

理由はシンプルで、根粒菌が空気中の窒素を固定して作物に供給するため、外部から窒素を大量に与える必要がないからですね。

大豆の基本施肥設計

一般的な大豆肥料の成分構成は以下の通りです:

  • 窒素:3%
  • リン酸:20〜30%(配合によって幅がある)
  • カリ:7~10%

窒素3%という低い設定は、発芽から根粒菌が着生するまでの初期生育に必要な最小限の量を想定したもの。リン酸が多めに配合されているのは、根粒菌の着生を促進する効果があるとされるためです。

基本に忠実なら追肥は不要

この基本施肥設計に従うのであれば、大豆に追肥は必要ありません。

しかし実際には、基本通りに施肥しても生育が思わしくない、収量が伸びないというケースが少なくない。そこで多くの生産者が「追肥した方がいいのでは?」「窒素をもっと入れた方がいいのでは?」と考え始めるわけです。

ここで重要なのは、追肥の要否を判断する前に、まず根粒菌の着生状況を確認することです。


開花期の根粒菌チェック方法と判断基準

追肥判断のスタートラインは、根粒菌の状態を自分の目で確認することです。

根粒菌チェックのタイミングと手順

  1. 時期:開花期(根粒菌が最も活発に活動する時期)
  2. 方法:株を引き抜いて根を観察
  3. 確認内容:根粒菌の数を数える

水田転換畑などの排水性が悪い圃場や、pH が低い圃場では根粒菌の着生が悪いことがあります。北海道の畑作地帯でも、圃場によって根粒菌の着生にはバラつきがあるため、必ずチェックが必要です。

判断基準:1株あたり10個のライン

根粒菌を数えた結果、1株あたり10個未満の場合は追肥が推奨されます。

理由は明確で、根粒菌が少ないということは、本来根粒菌が供給するはずの窒素が不足している状態だからです。この場合、外部から窒素を補わないと生育不良や収量低下につながります。

根の観察をせずに判断するのは危険

よくある失敗パターンは、根の状態を確認せずに「生育が悪いから追肥しよう」と判断してしまうこと。

これは例えるなら、体重や体脂肪率を測らずに「もっと食べるべきか、減らすべきか」を判断しようとするようなものです。まず現状を把握しないと、適切な判断はできません。

チェックリスト:追肥判断の事前確認項目

  •  開花期に株を引き抜いて根を観察した
  •  根粒菌の数を数えた(1株あたり)
  •  圃場の排水性や pH を把握している
  •  過去の施肥履歴を確認した

根粒菌が10個以上ある場合の追肥リスク

根粒菌が10個以上着生していた場合、多くの生産者はこう考えます。

「根粒菌がたくさんついている。であれば、さらに追肥することで窒素供給が増えて、収量アップにつながるのでは?」

一見、理にかなった考え方に思えますが、実はこれが落とし穴になる可能性があります。

窒素過多で根粒菌がサボる

根粒菌は、周囲に窒素が少ない状態だからこそ活発に働きます。

逆に言えば、窒素が豊富にある状態では「わざわざ自分が窒素を固定しなくてもいいか」とサボってしまうわけです。これは根粒菌の生理的な特性で、窒素が充足している環境では活性が落ちます。

心を鬼にして窒素を与えない選択

せっかく根粒菌が10個以上着生しているなら、その働きを最大限に引き出すために、あえて窒素を追加しない方が合理的なケースがあります。

根粒菌のフルパワーを活かすことで、追肥コストを抑えつつ収量を確保できる可能性があるわけです。

確度:中〜高(圃場条件による)

ただし、この考え方が自分の圃場で再現されるかどうかは別問題です。

理論的には正しくても、実際の圃場では土壌条件、気象、品種、栽培方法などの要因が複雑に絡むため、必ずしも教科書通りにいくとは限りません。

判断基準:根粒菌10個以上の場合

  • 窒素追肥を控える → 根粒菌の活性を維持してコスト削減
  • 窒素追肥を行う → 肥料の力で収量を押し上げる(根粒菌の活性は落ちる可能性)

どちらを選ぶかは、自分の圃場で試験して確認するのが最も確実です。


マイコス菌が大豆圃場で効きにくい理由

最近、大豆栽培でマイコス菌(菌根菌)を使用する事例を見かけるようになってきました。

しかし、正直なところ北海道の大豆圃場では期待したほどの効果が見られないケースが多いと感じています。

マイコス菌の働き

マイコス菌は、根に共生して根の届かない範囲のリン酸を吸収・供給する働きがあります。

通常、根が直接吸収できる範囲は限られていますが、マイコス菌の菌糸が伸びることで、より広範囲のリン酸を利用できるようになるわけです。

【重要】北海道の圃場はリン酸過剰が多い

ところが、多くの北海道の畑作圃場では長年の施肥によってリン酸が蓄積しており、リン酸過剰の状態になっていることが少なくありません。

リン酸が十分にある環境では、マイコス菌も根粒菌と同様に「わざわざ働かなくてもいいか」と活性が落ちてしまいます。

▼リン酸過剰でお悩みの場合はこちらを必ず参照ください

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大豆肥料の高リン酸設計がミスマッチ

さらに、大豆用肥料は窒素3%に対してリン酸が20〜30%という高リン酸設計が一般的です。

この肥料を使っている限り、圃場内のリン酸濃度はますます高くなり、マイコス菌が活躍する余地が少なくなります。

マイコス菌が効果を発揮する条件

マイコス菌自体が悪いわけではなく、適切な場所で使えば効果は期待できます。

たとえば:

  • 痩せ地でリン酸が不足している圃場
  • リン酸施肥コストを抑えたい場合
  • 干ばつ対策として水分吸収を強化したい場合

こうした条件下では、マイコス菌の使用メリットは大きいでしょう。

確度:中(圃場のリン酸レベルによる)

ただし、リン酸過剰な圃場でどこまで効果があるかは未知数です。

コストがそれほど高くないとはいえ、効果が見込めない資材を使うのは合理的とは言えません。マイコス菌を使用する場合は、まず土壌診断でリン酸レベルを確認し、圃場を選定してから試験的に導入するのが無難です。

私の知識の集大成】土壌診断については、こちらで詳しく解説しています

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2つの栽培スタイル:根粒菌活用型と追肥型

大豆栽培には、大きく分けて2つのアプローチがあります。

スタイル1:根粒菌活用型

根粒菌の働きを最大限に引き出すことで、窒素施肥を最小限に抑えるスタイルです。

メリット

  • 肥料コストを削減できる
  • 追肥作業の手間が省ける
  • 環境負荷が低い

前提条件

  • 根粒菌が十分に着生する圃場条件(排水性、pH、前作など)
  • 開花期に根粒菌チェックを行う管理体制

スタイル2:追肥型

根粒菌には期待せず、追肥によって窒素を供給して収量を確保するスタイルです。

メリット

  • 根粒菌の着生が悪い圃場でも対応できる
  • 窒素供給をコントロールしやすい
  • 生育不良時のリカバリーが可能

デメリット

  • 肥料コスト増
  • 追肥作業の手間とタイミング管理が必要
  • 窒素過多で倒伏リスクが上がる可能性

根粒菌活用?追肥?|どちらを選ぶべきか?

理想は根粒菌活用型ですが、圃場条件によってはうまくいかないこともあります。

まずは根粒菌活用型を基本とし、根粒菌の着生が悪い圃場や年次では追肥型に切り替える——このハイブリッド戦略が現実的でしょう。

重要なのは、どちらか一方に固執せず、自分の圃場条件と経営方針に合わせて柔軟に選択することです。


自分の圃場で試験する際のポイント

理論や他人の事例がどれだけ正しくても、自分の圃場で再現されるとは限りません。

圃場試験の基本設計

  1. 対照区と処理区を設定:片方は追肥あり、片方は追肥なし
  2. 同一圃場内で比較:条件を揃えるため、できるだけ近い場所で
  3. 複数年データを取る:1年だけでは気象の影響を切り離せない

試験で確認すべき項目

  • 収量(kg/10a)
  • 品質(タンパク含量など)
  • 肥料コスト
  • 作業時間

これらを総合的に評価して、自分の経営にとって最適な方法を見極めます。

資材メーカーの試験事例をそのまま信用しない

肥料や資材の販売会社が提示する試験事例は、あくまで特定条件下での結果です。

自分の圃場で同じ結果が出るかどうかは別問題なので、必ず自分で確認する姿勢が重要ですね。

確度:高(自分の圃場データが最も信頼できる)

最終的に最も信頼できるのは、自分の圃場で積み重ねたデータです。

時間とコストはかかりますが、長期的に見れば最も費用対効果の高い投資と言えます。


5) FAQ

Q1: 根粒菌が10個以上あるのに生育が悪い場合、追肥すべきですか?

A1: 根粒菌が十分にあっても生育が悪い場合、窒素以外の要因(リン酸、カリ、微量要素、pH、排水性など)が原因の可能性があります。まず土壌診断を行い、窒素以外の問題を特定してから対応するのが無難です。安易に窒素追肥をすると、根粒菌の活性が落ちて逆効果になるリスクがあります。

Q2: マイコス菌を使っている圃場でも追肥判断は同じですか?

A2: 基本的な判断基準は変わりません。マイコス菌はリン酸や水分の吸収を助けるものであり、窒素供給には直接関与しないためです。ただし、マイコス菌を使用している圃場でも、リン酸過剰なら効果が薄い可能性があるため、土壌診断で確認することをおすすめします。

Q3: 追肥のタイミングはいつがベストですか?

A3: 根粒菌が10個未満で追肥が必要と判断した場合、開花期から初期着莢期が目安です。ただし、生育ステージや品種、圃場条件によって最適タイミングは変わるため、自分の圃場で試験を重ねて最適なタイミングを見極めることが重要です。追肥が遅すぎると効果が薄く、早すぎると茎葉過繁茂のリスクがあります。

まとめ

大豆の追肥判断は、開花期の根粒菌チェックから始まります。

1株あたり10個未満なら追肥、10個以上なら窒素を抑えて根粒菌の活性を最大化する——これが基本ラインです。ただし、圃場条件や栽培方針によって最適解は変わるため、自分の圃場で試験して確認することが不可欠。

マイコス菌についても、リン酸過剰な北海道の圃場では効果が限定的な可能性があるため、土壌診断を踏まえて使用を検討しましょう。

音声で詳しく聞きたい方へ
この記事のもとになったPodcastエピソードでは、より実践的な事例や、メーカー担当者から聞いた裏話も語っています。通勤中やトラクター作業中に聞きたい方は、Podcast『土壌医あさひのオモテじゃ語れない農業トーク』もぜひチェックしてください。

この番組は、いわば「ラジオの中の勉強会」。北海道で頑張るあなたと同じ仲間たちの悩みや成功事例を共有しながら、明日からの農業がもっと面白くなるヒントを配信しています。

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あさひ

私も日々、自己研鑽しています。一緒に農業経営の勝ち筋を考えていきましょう!!


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