澱源用ばれいしょ(でんぷん原料用)の栽培で、年々雑草の発生が深刻化しています。特にブタクサ、アカザ、イタドリ、カミツレ類、スギナなどが多発し、収量低下・作業負担増・コスト上昇の原因となっています。
この記事では、道北〜道東エリアを想定し、主要雑草の特徴と防除難易度、使用可能な除草剤体系、年間の作業スケジュールを体系的にまとめます。
1. 澱源用ばれいしょにおける雑草の現状と課題
冷涼な気候と酸性傾向の強い火山灰土壌では、排水不良地での多年生雑草(スギナなど)や、高窒素条件下での一年生広葉雑草(ブタクサ・アカザ)が優占しやすくなります。
除草の遅れは、初期生育の阻害だけでなく、澱粉含量・塊茎肥大にも影響します。
2. 主要雑草の特徴と防除難易度
ブタクサ(キク科)|大量発生しやすい広葉雑草
5〜6月に発生し、7〜9月に波状的に出現。窒素過多・弱酸性条件で旺盛。
1株あたり3〜6万粒以上の種子を生産し、刈取りだけでは再萌芽します。
対策:発生前の土壌処理+萌芽前の茎葉処理(グルホシネートまたはパラコート+ジクワット)。出遅れは土寄せで遮光して抑制。
アカザ(ヒユ科)|春先に爆発的に発生する雑草
早春〜晩春に大量発生し、肥沃・乾燥地で優占化。埋土種子が多く年次発生。
対策:発生前にオキサジアゾン、ジメテナミドP+ペンディメタリン。出遅れたら土寄せ併用。
イタドリ(タデ科)|地下茎で拡散する最強の多年草
春〜初夏に地下茎から一斉萌芽。切断片で分布拡大。
対策:秋期にグリホサートのスポット処理が最も効果的。作期中の耕起は逆効果(断片拡散)。
カミツレ類(キク科)|越年型で二峰性発生
早春〜秋にかけて発生(越年型あり)。種子供給が多い。
対策:発生前の土壌処理主体、遅発生には萌芽前茎葉処理。
スギナ(トクサ科)|酸性土壌・排水不良で優占化する多年草
春〜初夏に展開し、地下茎で再生。酸性・湿潤立地で強い。
対策:pH矯正(6.0〜6.5)+排水改善+グリホサート秋期処理。作期中は土寄せで遮光。
3. 澱源用ばれいしょで使える主力除草剤体系
発生前に効く「土壌処理型除草剤」
オキサジアゾン(ゴーゴーサン乳剤/細粒剤F)
植付後〜萌芽前の全面散布で、広葉・イネ科を初期から抑制。
鎮圧により処理層が安定し、効果が持続。雨前散布が安定。
ジメテナミドP+ペンディメタリン(モーティブ乳剤)
広域スペクトル型で1〜2か月持続。
低温・乾燥時は立ち上がりが遅れるため、整地と鎮圧を徹底。
萌芽前に使う「非選択性茎葉処理剤」
グルホシネートP(ザクサ液剤)
萌芽直前まで使用可。接触型で残効はないが、取りこぼしのリセットに有効。
注意:芽が出た後は厳禁。風下ドリフト対策必須。
パラコート+ジクワット(プリグロックスL)
即効性が高く、萌芽直前の畦間処理に最適。
注意:毒物指定。うね上ドリフト禁止。販売条件に従う。
生育期のイネ科選択処理剤
セトキシジム(ナブ乳剤)
イネ科雑草(3〜8葉期)に効果。広葉には無効。
処理後は7日程度攪乱を避ける。
補完・根絶系の特殊除草剤
メトリブジン(センコル水和剤)
広葉中心の発生前〜初期対応剤。
砂質地や低温時の薬害に注意し、品種特性を確認。
グリホサートK(ラウンドアップマックスロード)
耕起前または秋期の多年草処理に有効。
スギナは高薬量で個体狙い。 作付期中は使用不可。
4. ステージ別|最短手数で抑える除草スケジュール
| 時期 | 主目的 | 使用薬剤例 | 作業内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 4月(耕起前) | 永年草の根絶・圃場縁の浄化 | グリホサートK | 雑草生育期に全面散布→耕起前処理 | 土壌処理効果はない。2〜7日後耕起。 |
| 4〜5月 | 一年生雑草の発生前抑制 | モーティブ or ゴーゴーサン | 植付後~萌芽前に全面散布 | 鎮圧で処理層固定。雨前が安定。 |
| 5月中旬 | 取りこぼし一掃 | ザクサ or プリグロックスL | 萌芽直前の生育期散布 | 芽出後厳禁。ドリフト対策徹底。 |
| 6月 | イネ科残草処理 | ナブ乳剤 | イネ科3〜8葉期に散布 | 広葉には無効。再生を防ぐ。 |
| 6〜7月 | 培土(1〜2回) | – | 15cm以上の土寄せで遮光 | ブタクサ・アカザ小苗を埋没。 |
| 8〜9月 | 収穫前の畦間除草 | ザクサ or プリグロックスL | 畦間処理のみ実施 | ラベル記載の制限日を厳守。 |
5. 機械を使わない物理的防除の実践法
砕土・整地・鎮圧で処理層を安定化
発生前の土壌処理剤は、均一な処理層が命。ムラを防ぐことで持続効果が安定。
中耕・土寄せによる小苗埋没
萌芽10日後・20日後を目安に1〜2回実施。
うね肩まで覆土し遮光で再生を防ぐ。
被覆資材の効果と適用条件
黒不織・紙マルチは雑草圧の高い小区画向き。澱源用全圃場では非効率。
6. 収穫後(9〜10月)の雑草再発防止と圃場改善
グリホサートで残草の種子供給源を遮断
収穫直後、畦間雑草を刈取→イタドリ・スギナ個体にスポット散布。
秋耕+粗整地で春作業を軽減
冬期の凍上で自然砕土され、春の播種床づくりが容易に。
排水改善とpH矯正でスギナ立地を改良
素掘り明渠の通水確保とCa/Mg石灰によるpH6.0〜6.5化で再生抑制。
7. 輪作と除草剤ローテーションの鉄則
HRACコードによる作用機構ローテ
てん菜 → ばれいしょ → 麦 → 大豆のように作物を回し、
K3/15系(ジメテナミドP+ペンディメタリン)と10/22系(グルホシネート・パラコート系)を年次ローテ。
肥料設計を見直して雑草優占を防ぐ
ブタクサ・アカザは表層窒素過多で優占化。
深層施肥+アンモニア過多の抑制で発生圧を下げる。
8. 年間管理カレンダー(4月〜10月)
| 月 | 主作業内容 |
|---|---|
| 4月 | 耕起前グリホサート → 植付&土壌処理柱剤散布 |
| 5月 | 萌芽直前に茎葉処理 → 1回目土寄せ |
| 6月 | イネ科残草処理 → 2回目土寄せ |
| 7月 | 畦間草に接触剤処理 |
| 8月 | 収穫前除草(前日制限厳守) |
| 9月 | 収穫→残草刈→グリホスポット→秋耕 |
| 10月 | 排水・pH矯正・翌年輪作計画確定 |
9. 翌年に向けた改善ポイント3選
「柱剤は1本に絞ってローテーション」
モーティブ⇄ゴーゴーサンを年次で入替。
茎葉剤もグルホシネート⇄パラコート+ジクワットを交互運用。
選択剤(セトキシジム)は必要時のみ。
「スギナ立地の根本改良」
秋にpH矯正+排水改良を行い、地下茎の体力を低下。
翌年の発生密度を抑制。
「スタルシードベッドの標準化」
植付7〜10日前の浅耕で小草を削除し、発生初期の雑草波を低減。
結果として、接触剤散布の回数を削減できる。
10. まとめ|ばれいしょ除草の本質は「初期勝負+基盤改善」
ばれいしょ栽培での雑草対策は、初期防除と秋期圃場管理の質が勝負を分けます。
・発生前の柱剤散布の徹底
・pH・排水・肥料設計の見直し
・翌年を見越したローテーション管理
これらを守ることで、雑草圧を年々下げ、収量・品質・作業効率を同時に向上できます。