
菌根菌は作物の生育が良くなると聞くけれど、本当に効くのだろうか?



資材代をかける前に、期待できる働きと限界を知りたいですよね。土壌医であり、10年超で300軒以上の農家さんとその圃場を見てきた経験を活かして私が解説します。
この記事でわかることは、次の4つです。
この記事でわかること
・菌根菌、AM菌、根粒菌、マイコスの違い
・菌根菌に期待できる効果と、導入前の注意点
・増やし方、資材の使い方、海外の液状資材の事例
・筆者注目の国産有機液肥「生きてる肥料」の特徴と検討ポイント
北海道の畑で気になるリン酸条件に加え、海外の事例も紹介します。生育中の天候や生育を見て、資材の使用を判断する考え方も見ていきましょう。
菌根菌とは?AM菌・根粒菌・マイコスの違い



そもそも菌根菌、AM菌、マイコスは、何がちがう?



菌根菌は総称、AM菌はその一群、MYKOSは資材のブランド名です。まず、菌の分類と商品名を分けて整理しましょう。
植物の根と共生する菌根菌|外生菌根菌とAM菌
菌根菌は、植物の根と共生関係をつくるカビやキノコの仲間です。菌と根が組み合わさった構造を「菌根」、菌が伸ばす細い糸状の組織を「菌糸」と呼びます。
代表的なタイプの違いは、次のとおりです。
| タイプ | 共生の特徴 | 本記事での位置づけ |
|---|---|---|
| 外生菌根菌 | 根の表面を菌糸で覆い、細胞の間にも菌糸を伸ばす | マツ科・ブナ科などの樹木で知られる |
| アーバスキュラー菌根菌(AM菌・AMF) | 根の細胞内に、養分を受け渡す樹枝状の構造をつくる | 畑作物での農業利用を考える中心 |


外生菌根と内生菌根の違いを図で見たい方は、森林総合研究所の解説も参考にしてください。
本記事では、ここから主にAM菌を扱います。菌根菌資材を買うときも、「どの菌が、どの作物と共生するのか」を確認すると、商品名だけでは見えない違いを把握できます。
菌根菌と根粒菌は役割が違う
AM菌と根粒菌は、どちらも根と共生しますが、菌の仲間も主な働きも異なります。関西学院大学の研究室の解説は、それぞれの養分供給の仕組みを説明しています。
| 比較する点 | AM菌 | 根粒菌 |
|---|---|---|
| 微生物の仲間 | 菌類 | 細菌 |
| 主な共生相手 | 多くの畑作物など | マメ科植物など |
| 注目する働き | 土壌からリン酸・水分などを受け取り、植物へ供給 | 空気中の窒素を固定し、植物へ供給 |
| 根との関係 | 菌根を形成 | 根粒を形成 |
例えば、ダイズでは両方の共生を考える必要があります。菌根菌資材を使ったからといって、根粒菌による窒素固定まで同じように強まると判断するのは早計です。
「どの養分の吸収・供給を狙っているか」を分けると、施肥設計との関係も整理しやすくなります。
「マイコス菌」と呼ばれるMYKOSは菌根菌資材
巷で話題となった「マイコス菌」は、正式な菌の種名ではありません。MYKOS(マイコス)は、RTIが展開するAM菌接種資材のブランドです。
メーカー公式が示す菌種は、Rhizophagus intraradicesです。「菌根菌の一種を利用したマイコスという資材」と捉えると、名称の関係を理解しやすくなります。
同じMYKOSの系列でも、形態や施用法は製品ごとに確認が必要です。後半では、水に分散させて使うMYKOS GOLD WPも紹介します。


菌根菌の効果とデメリット|作物・圃場条件で見極める



俺が作る作物や畑でも、菌根菌の効果は期待できるのか?



導入の前に確認したいのは、共生相手・土壌リン酸・施用時期です。まず条件と費用を押さえ、そのうえで効果を見ていきましょう。
共生しやすい作物と共生しにくい作物がある
すべての作物がAM菌と共生するわけではありません。一般的な宿主関係と、商品全体の栽培事例を分けて見る必要があります。


宿主作物の例は農研機構の北海道のダイズ研究、非宿主の例は北海道農業研究センターの発表とキャベツの輪作研究で確認できます。
生きてる肥料![]()
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リン酸が多い畑では効果が出にくい場合がある


土壌にリン酸が多い条件では、AM菌の共生やリン酸吸収への上乗せを期待しにくい場合があります。
農研機構は、北海道のダイズ圃場でAM菌感染率を調査しています。土壌リン酸含量やリン酸施肥量が多い条件では、感染率が低い傾向が報告されました。土壌が堅密な条件でも感染率は低く、リン酸だけで結果が決まるわけではありません。農研機構の成果情報
土壌診断書は、次の順番で確認すると読み違いを減らせます。
| 確認する欄 | 見る内容 | 導入判断との関係 |
|---|---|---|
| リン酸の項目名・分析法 | 有効態リン酸、トルオーグ法など | 測定法に対応する作物別基準と比較する |
| 数値・単位 | mg/100g、mg/kgなど | 単位が違う値をそのまま比較しない |
| pH・EC、圃場の状態 | 診断上の過不足、根張り、硬さなど | 生育不良をリン酸だけで説明しない |
| 採土年・採土地点 | 今の圃場条件を代表する資料か | 古い診断と現在の施肥履歴を区別する |
単位の違いを示す仮定例では、20mg/100gは200mg/kgと同じ濃度です。この数字は説明用であり、菌根菌資材が効く・効かない境界ではありません。
測定法と診断書の読み方は、有効態リン酸の基礎解説も参考にしてください。


筆者は、リン酸が多いという理由だけで、菌根菌資材の可能性を切り捨てる必要はないと考えています。 圃場の条件が違う以上、資料だけでは結果を確定できないからです。ただし、効果が見られなかった場合には、高リン酸は理由を考察する材料になります。
北海道の畑をひとまとめにせず、自分の診断結果から考える。その出発点は、リン酸過剰のリスクと対策でも整理しています。


共生する時間と資材費・施用作業も考える
菌根菌資材は、施用した時点で共生が完成するわけではありません。根に届き、共生関係が成立する条件を考える必要があります。
導入費は商品代だけでなく、次の作業にも及びます。
- 種子処理、培土への混和、灌水などの追加作業
- 作物・生育段階に合う施用量や機材の確認
- 肥料・農薬との混用条件の確認
- 保管温度や使用期限の管理
一般的な菌根菌の研究で共生までの期間が示されていても、その日数を別の商品へ転用できません。「生きてる肥料」の共生までの時間も、今回確認した資料ではわかりませんでした。
増収による売上の増加額や肥料代の削減額より、追加費用が大きければ利益は増えません。導入を検討するときは、菌の働きに加え、資材代と作業全体の負担も比較します。
根の届かない範囲からリン酸を受け取る仕組み
AM菌の菌糸は根の外にも伸び、土壌から集めたリン酸などを植物へ渡します。その見返りが、植物の光合成でつくられた炭素源です。
AM菌と植物のやり取り(模式図)
土壌のリン酸・水分
↓
AM菌の菌糸
↓
植物
植物の光合成産物(炭素源)
↓
AM菌
出典:関西学院大学の研究解説。一般的な共生の仕組みを示した模式図で、商品の効果を示す試験結果ではありません。
イメージは、根の周囲に広がる細い探索網です。根だけで探す範囲に菌糸の網が加わり、土壌中の養分にアクセスする経路が増えます。
大切なのは、「肥料を新しく足す」働きと「土壌中の養分を受け取る」働きの違いです。菌根菌を導入しても、畑に存在しないリン酸が新しく生まれるわけではありません。
また、土壌中のすべてのリン酸を利用できるとも限りません。吸収の仕組みを知ることが、過度な減肥を避けながら可能性を探る助けになります。


水分吸収と乾燥ストレスへの効果は条件で変わる
乾燥条件でAM菌が生育や生理機能の低下を軽減した研究があり、水不足への対応として検討する理由があります。
2022年に発表されたブラジルの温室ポット試験では、2品種のダイズを用いています。Rhizophagus clarusを接種し、V3期に7日間の乾燥処理を行いました。水分状態や光合成などへの悪影響が、接種によって軽減されたと報告されています。
接種は播種時に行っています。乾燥区は土壌の保水容量の60%、十分な灌水区は100%に維持して比較しました。
この試験は乾燥処理より前に接種しており、生育中の市販液肥の施用とは条件が異なります。干ばつで弱った作物への散布で、同じ結果が得られると示したものではありません。
イネを非湛水条件と湛水条件で育てた研究では、水管理がAM菌の共生に影響しました。非湛水区にも週3回の灌水を行っており、干ばつ耐性を比較した試験ではありません。
陸稲・畑条件の知見を、水を張った水田へそのまま当てはめないことが大切です。イネの水管理とAM共生の研究
リン酸肥料のコスト対策としてどこまで期待できるか
菌根菌の働きを活かしたリン酸減肥の研究はあります。ただし、研究で減肥できた条件を確認してから、経営への応用を考えます。
北海道のダイズ研究は、宿主作物の跡地で土着AM菌を活かす方法を検討したものです。研究期間は2004〜2013年。リン酸減肥試験50例から、当時の基準に対する3割減肥の適用条件を整理しています。
標準区のダイズ粗収量がおおむね400kg/10a以下という条件があり、高い収量水準へ一律に適用する提案ではありません。農研機構の成果情報
筆者は、水不足への対応とリン酸肥料のコスト対策という両面から、菌根菌に注目する価値があると考えています。 水や養分の吸収が生育の制約になる場面で、別の選択肢を持てる可能性があるからです。実際の減肥や増収は、作物・圃場・商品ごとに確かめる必要があります。
減肥による肥料代の削減額と、資材代・追加作業費を比較して経営への影響を考えます。増収が見られた場合も、収量を売上へ換算して判断しましょう。リン酸肥料の高騰対策と合わせて、施肥全体を見直すのが出発点です。


菌根菌の増やし方と資材選び|土着菌・粉末・液体を比較



菌根菌を増やす管理と、資材を使う方法をどう選べばよいでしょうか?



菌根菌を活かす方法は、土着菌を増やす管理と、資材で外から導入する方法に分かれます。商品を比較するときは、形態に加え、根への届け方と使用を判断する時期を見ます。


輪作・緑肥で土着菌を活かす
土着AM菌を活かす基本は、共生する作物の根を利用することです。輪作や緑肥の組み合わせも、資材を買う前に検討したい選択肢でしょう。
農研機構は、キャベツの後作や間作に、AM菌の宿主となる緑肥を導入する方法を検討しています。次作のトウモロコシや小麦では、AM菌感染と収量の改善が報告されました。
北海道の黒ボク土圃場、有効態リン酸13〜15mg P₂O₅/100gでの結果です。緑肥の地上部は試験では圃場外へ持ち出しています。すき込みそのものの効果を比較した結果ではありません。
ただし、緑肥なら何でもAM菌を増やすとは限りません。ナタネなどの非宿主もあるため、「緑肥を入れた」という作業名だけでは効果を判断できないのです。
緑肥の種子代・作業費・輪作上の目的も含め、どの作物の前に何を栽培するかを考えます。菌根菌を増やす目的だけで、既存の輪作体系を決め直す必要はありません。
米ぬかで菌根菌は増える?土づくりと培養の違い
「米ぬかを入れると微生物が増える」という説明と、AM菌が増えることは同じではありません。菌の種類と増殖の条件を分けて見る必要があります。
土づくりで有機物を扱う話から、米ぬかだけでAM菌を培養できると結論づけるのは早計です。この記事で確認した資料には、その方法を裏付ける再現可能な手順はありませんでした。
一方、植物なしでの培養がすべて不可能なわけでもありません。2019年には、特定の脂肪酸を添加した培地で、AM菌の生育と次世代胞子の形成を促した研究が発表されています。
実験室で条件を整える培養と、畑へ米ぬかを入れる管理は別の話です。自分の畑でAM菌を活かすなら、まず共生する作物の根と輪作条件に目を向けます。
種子処理・培土混和・灌水施用を比較する


菌根菌資材には、種子処理だけでなく、根への灌水などを案内する製品もあります。「粉末は播種前、液体は生育中」と単純には分けられません。
| 製品の例・形態 | 公式が案内する施用方法 | 判断する時期・確認点 |
|---|---|---|
| MYKOS GOLD WP:水に分散させる資材 | 種子処理、根の浸漬、灌水設備での施用など | 選ぶ施用法に合わせて時期を検討。販売時から液体の製品とは区別する |
| キンコンバッキー:水和・粉衣で使う資材 | 種子粉衣、苗への灌水や浸漬など | 粉衣は播種前。水和は発芽直後・育苗期・定植直前などを案内 |
| 生きてる肥料 | 土耕・点滴栽培、灌水施肥など | 生育中の使用を検討できる。作物別の液量と保管条件を確認する |
培土混和、種子処理、灌水は、同じ商品で自由に入れ替えられるわけではありません。製品ごとに案内される方法を確認し、処理量や倍率も別の商品から転用しないようにします。
栽培の目的と施用時期から菌根菌資材を選ぶ
資材選びは、「いつ使いたいか」から決めると具体的になります。播種前に決める方法と、生育を見て検討する方法では、準備する作業が違うからです。
| 目的・判断時期 | 比較する施用方法 | 購入前に確認する事項 |
|---|---|---|
| 播種前に処理を決めたい | 種子への粉衣・接種 | 対象作物、種子への処理量、作業方法 |
| 育苗・定植時に根へ届けたい | 苗への灌水・浸漬、適用のある培土混和 | 苗や培土への使用条件、液量、根との接触 |
| 生育中の天候や生育を見て検討したい | 対象時期に使える灌水等 | 作物・生育段階、根へ届ける方法、効果を確認した条件 |
生育中に使用できることと、その時期の課題に効果が間に合うことは分けて確認します。菌種や含有量だけでなく、圃場で実施できる施用方法まで見て比較するのがポイントです。
期待する効果と、圃場で実施できる施用方法を合わせて選びましょう。目的と作業が合うかを確認すると、新しい資材も比較しやすくなります。
海外の液状菌根菌資材と栽培試験
海外には、液状の菌根菌接種資材を扱う研究や製品があります。国と作物だけでなく、施用時期と資料の種類も見てみましょう。
| 国・事例 | 作物・使い方 | 報告・説明された働き | 導入判断の参考になる点 |
|---|---|---|---|
| キューバ:INCAの研究 | トマト「Amalia」。育苗期、発芽7日後に液状資材を接種 | 生育・収量への好影響を研究で報告 | 育苗期の接種と保存条件まで含めて結果を読む |
| 豪州メーカー:AMinoc Liquid | レタスの根を観察する栽培試験。灌水施肥や苗の浸漬等も案内 | 根・株の生育改善をメーカーが報告 | 写真に加え、対照区・反復数などの情報を見る |
| 米国メーカー:Orca Liquid Mycorrhizae | 土耕・ココ培地・水耕。生育中の植物への灌水を案内 | 養水分吸収の促進をメーカーが説明 | 生育中に灌水で使う選択肢の例として見る |
出典:キューバの研究論文、AMinocのメーカー試験報告、Orca公式・米国の所在地。最終列は、各資料から読み取れる検討上のポイントです。
キューバの研究は2008〜2010年に行われ、保護用溶液と施用前15日間の冷蔵保存を使っています。トマト「Amalia」を用い、NPK肥料を併用した圃場試験です。液状接種資材だけで栽培した結果ではありません。
液状資材は、製品名と効果だけでなく、菌を根へ届けるまでの取り扱いも確認したいところです。
AMinocの報告は2025年11月10日付のメーカー記事です。反復数・統計解析は掲載内容から確認できず、試験場所も明示されていません。Orcaも、ここでは公式の使用方法と訴求を紹介しています。
菌根菌入り液肥「生きてる肥料」をどう使う?筆者が注目する理由



「生きてる肥料」は、いつ、どのように使えるのでしょうか?



筆者が注目しているのは、天候や生育を見ながら、灌水施肥での使用を検討できる点です。筆者は本商品をまだ使用しておらず、自分の畑での効果は確認していません。
メーカーは栽培比較を公開しています。ただし、今回確認した資料だけでは、菌根菌との共生による効果の程度まで判断できません。
出典:公式説明・キャベツの比較記事。ここでは、商品情報、使い方、費用の順に確認します。
原料・成分と菌根菌について公式説明からわかること
「生きてる肥料」は、公式が菌根菌の含有を説明する国産有機液肥です。魚類残渣物や廃糖蜜などを原料としています。
メーカーは、有機原料をあらかじめ分解し、無機態窒素を含む液肥として説明しています。無機態窒素には、アンモニア態も含まれます。有機原料から製造したことと、窒素の形態は分けて考えましょう。農研機構の窒素形態の区分
公式掲載の2023年10月2日付分析表では、提出試料の結果は次のとおりです。
| 分析項目 | 結果(現物の質量分率) |
|---|---|
| 窒素全量 | 0.16% |
| アンモニア性窒素 | 0.12% |
| 硝酸性窒素 | 0.01%未満 |
| りん酸全量(P₂O₅として) | 0.01%未満 |
| 加里全量(K₂Oとして) | 0.23% |
出典:日本肥糧検定協会の分析・試験証明書(公式掲載PDF)。分析値は当該試料の結果で、現在の全製品の保証値として示すものではありません。
数字を見るときは、原料・養分の供給と、菌根菌による吸収支援を分けます。リン酸の分析値が低いことから、商品をリン酸肥料の代替量へ単純換算することもできません。
有機JASについては、1L・20Lとも資材リスト登録証(書類審査)が存在しています。
登録証は資材の適合性に関する書類です。作物の認証や、菌根菌の含有量・効果を証明するものとしては扱いません。
| 確認できる情報 | 今回の資料だけでは確認できない情報 |
|---|---|
| 原料、容量、表示価格、希釈倍率、分析表、資材リスト登録証 | 菌根菌の具体的な菌種・生存数、共生までの時間、作物別の効果、混用条件 |
メーカーは「水中では生きられないといわれていた菌根菌の含有に成功」と説明しています。これは同社の技術についての表現です。海外には液状資材の例もあり、液状の菌根菌資材そのものが初めて登場したとは捉えません。
生育中に使用を判断できる点に注目している
私が特に関心を持ったのは、生育中に「やはり使ってみよう」と判断できる点です。 種子処理を選ぶ場合は播種前に判断が必要ですが、灌水で使える資材なら、使用を検討するタイミングが変わります。
例えば、播種時には資材を使うつもりがなかった畑を想像してください。雨が少ない日が続き、生育が気になってきた。種子処理なら「使っておけばよかった」と思っても、その処理をさかのぼって行うことはできません。
この場面は、使用経験ではなく説明用の仮定です。生育中に施用を検討できれば、播種後にも選択肢を持てます。ただし、施用直後に共生が完成し、生育が回復すると約束するものではありません。
粉末を水和して使う製品にも、生育中に施用できるものがあります。そのうえで、希釈して灌水する液肥という形は、自分の栽培体系と照らして検討したい特徴です。
新しい資材を先に試し、自分の畑に合う使い方を探したい生産者もいるでしょう。比較したいのは、いつ判断でき、どこへ、どう施用できるかです。
私は今回、菌根菌を含む液肥として初めて「生きてる肥料」の存在を知りました。まだ使用していませんが、2027年には自分の畑で試してみたいと考えています。結果が出たら、この記事の資料上の期待と照らして考察したいところです。
施用方法と費用を確認する
「生きてる肥料」の公式使用方法は、栽培方式によって倍率が異なります。公式の使用方法をもとに整理しました。
| 栽培・施用方法 | 公式の希釈倍率等 |
|---|---|
| 土耕・点滴栽培 | 300〜500倍 |
| 灌水施肥 | 同じく300〜500倍、週1回程度 |
| 水耕栽培 | 25〜50倍。育苗〜初期は50倍以上で生育を見ながら調整 |
| 葉面散布 | 300〜500倍 |
葉面散布の案内があることと、葉への散布で菌根菌が根に共生することは同じではありません。菌根共生を狙うなら、根へ届く施用方法とその条件を確認します。
通常の表示価格から計算した原液の単価は、容量ごとに次のとおりです。
| 容量 | 税込表示価格 | 原液1L当たりの商品代 |
|---|---|---|
| 1L | 2,750円 | 2,750円/L |
| 20L | 14,080円 | 704円/L |
出典:1L商品ページ、20L商品ページ。2026年10月7日閲覧時の通常表示価格です。送料は含まず、購入時の価格・送料・キャンペーンは注文画面で確認してください。
10a当たりの商品消費額は、次の式で計算できます。
希釈後の施用液量(L/10a/回)÷希釈倍率×原液単価(円/L)×施用回数
希釈倍率は、完成した液の量を原液の量で割った倍率として計算します。公式資料では面積当たりの標準液量を確認できないため、倍率だけで10a費用を決めることはできません。
計算方法を示す仮定例として、希釈後の液100Lを1回使った場合を比較します。
| 仮定の希釈倍率 | 原液使用量 | 1L容器の単価で計算 | 20L容器の単価で計算 |
|---|---|---|---|
| 300倍 | 約0.333L | 約917円 | 約235円 |
| 500倍 | 0.2L | 550円 | 約141円 |
100Lは説明用の仮定で、10a当たりの推奨量ではありません。金額は使った原液の按分額です。購入時の支出額とは区別してください。
少量を試す場合は1L、使用量が多い場合は20Lという比較ができます。ただし、単価の低さだけで容量を決めず、使い切れる量と保管できる条件も合わせて考えます。


手元に備える前に保管条件を確認する
保管の基本は「25℃以下の冷暗所」です。
「使いたくなったときに使えるよう、あらかじめ手元に置く」には、この条件を満たせることが前提です。
公式説明と商品ページの温度表記が異なっていたため、株式会社共立ソリューションズへ問い合わせました。追加回答も含め、保管条件を整理します。
| 項目 | メーカーの案内 |
|---|---|
| 温度・場所 | 25℃以下の涼しい暗所 直射日光や高温になるハウス・保管場所を避ける |
| 冷蔵・凍結 | 冷蔵は不要。凍結を避ける |
| 未開封 | 商品到着後から1年以内の使用が目安 |
| 開封後 | 開封日から1年以内。キャップを閉めて冷暗所で保管し、できるだけ早くシーズン内に使用 |
| 開栓・空気交換 | 現行製品はガス抜き機能付きキャップのため、ガス抜き目的の開栓・定期的な空気交換は不要 |
「1年以内」でも、開封後は早めに使う
メーカーは、開封後に発酵・変化が進む可能性を説明しています。「開封日から1年」は長期保管を勧める案内ではなく、シーズン内のできるだけ早い使用を推奨しています。
未開封でも到着後1年以内の使用が目安です。未開封なら無期限に保管できるという意味ではありません。
夏の倉庫は、日陰でも温度を確認する
- 夏季も25℃以下を保てる場所で保管する
- 高温・直射日光の下では、ガス発生や容器の膨らみ・破損の可能性がある
- 夏場に保管した分は長期間置かず、なるべくシーズン中に使用する
「日陰の倉庫だから大丈夫」とは判断できません。
25℃を超えた場合の許容時間や、菌の生存・品質への影響の程度は示されていません。保管場所の温度を確認しましょう。
月1回の空気交換は、改良前の製品の案内
以前のキャップにはガス抜き機能がなく、注意書きで空気交換を案内していました。
現行製品はガス抜き機能付きキャップへ改良済みです。ガス抜き目的で到着時に開栓したり、定期的に空気交換したりする必要はありません。注意書きは製品入替のタイミングで刷新するとの回答でした。



私が関心を持っているのは、使いたい場面で選択肢を持てることです。手元に備えるなら、夏季の温度と冬季の凍結を避けられるかを先に確認します。容量は、使う予定と保管できる条件を合わせて考えたいですね。


まとめ|菌根菌資材は圃場条件と使い方で選ぶ



導入を考える前に、何を確認すればよいでしょうか?



菌根菌は、作物の養水分吸収を助ける可能性がある共生菌です。導入を考える際には、次の条件を押さえておきましょう。
- 作物が共生相手になるか
- 土壌リン酸や圃場の条件がどうなっているか
- 根へ届ける方法と、使用を判断する時期が合うか
- 資材代・追加作業・保管条件を含めて導入できるか
自分の畑でどの程度の効果が出るかは、この記事の資料だけでは確定できません。それでも、公開情報と圃場条件を照らすことで、試す価値を考える材料は増やせます。
生育中に使う液肥に関心がある方は、まず「生きてる肥料」の公式商品情報を開いてみてください。今日確認するのは、自分の栽培方式に合う施用方法があるかの1点です。使用量と保管条件も踏まえ、導入を検討しましょう。
