この記事で解決できるお悩み
・選果機やハーベスターの衝撃対策をしているのに馬鈴薯(イモ)の打撲が減らない
・カルシウムを入れたいがそうか病が怖くて石灰質資材を使えない
・土壌のリン酸過剰やpHが馬鈴薯の品質や歩留まりにどう影響するか知りたい
・打撲耐性を高めつつ秀品率・デンプン価を維持する施肥設計のヒントがほしい

収穫機や選果機にウレタンを貼って落差も減らしているのに、選果場で馬鈴薯の打撲(黒変)による等外品がどうしても減らないんだよな…。カルシウムが効けばイモの細胞が強くなるって聞くけど、石灰を入れるとpHが上がってそうか病が出るのが怖いし、どうすればいいんだろう?



土壌医として数多くの畑作現場を診てきた私が土壌の観点からお答えします!実は、機械の衝撃対策だけで打撲が減らない背景には、塊茎のカルシウム状態や土壌の化学性が関係しているケースが少なくありません。ただし、先に断っておくと「リン酸過剰さえ解消すれば打撲が消える」という単純な話ではないんです。土壌診断と塊茎の栄養状態、収穫条件を総合的に見ていく必要があります!
馬鈴薯(ジャガイモ・イモ)の収穫・選果シーズンになると、多くの農家さんを悩ませるのが「打撲(内部黒変)」による歩留まりの低下です。
「機械の走行スピードを落とした」「コンベアの落差にゴムパッドを貼った」という物理的な対策を徹底していても、なぜか打撲が多発してしまう年がありませんか?
その原因は、機械の扱い方だけとは限りません。品種や塊茎の温度、成熟度、乾物率、水分状態、そして土壌や塊茎中のカルシウム・微量要素の状態など、複数の要因が重なって「わずかな衝撃でも細胞が壊れやすい状態」を作り出している場合があります。
イモの細胞壁・細胞膜の健全性に関わる重要要素の一つが「カルシウム(Ca)」です。研究では、塊茎中のカルシウム濃度が低いと打撲(黒変)が起こりやすい傾向が報告されています。一方で、土壌中のリン酸が多い畑では、土壌pHや活性アルミニウムとの複合的な作用で養分バランスが崩れ、必要な養分が効きにくくなる圃場もあり、土壌の化学性管理は無視できない要因です。
この記事では、馬鈴薯の打撲に関わる化学的な背景から、そうか病リスクを抑えながらカルシウムを補う資材選定、リン酸施肥の見直しと苦土(マグネシウム)・ホウ素を組み合わせた施肥設計の考え方まで、土壌医の視点からわかりやすく解説します!
- この記事でわかること
- ① 馬鈴薯の打撲(黒変)が物理対策だけでは防ぎきれない複合的な理由
- ② 土壌のリン酸・カルシウム・pHがどう関係し合っているかの真実
- ③ そうか病リスクを抑えながら細胞壁を支える「硫酸カルシウム」の選び方
- ④ リン酸施肥の見直しと「苦土(マグネシウム)」「ホウ素」活用のポイント
この記事を読み終える頃には、打撲問題を土壌診断の視点から捉え直すきっかけが得られ、来作の土壌診断書を見る目が劇的に変わるはずです。ぜひ最後までじっくり読み込んでみてくださいね!
馬鈴薯の打撲原因とは?機械の衝撃だけで片付かない理由



ハーベスターのチェーンスピードを調整して、コンテナへの落下衝撃も極力抑えているつもりなんだ。それでも皮を剥くと黒く変色したイモが出てくるのは、一体何が原因なんだろう?



打撲は、衝撃によってイモの細胞が損傷し、内部の成分が酸化反応を起こすことで発生します。外側の衝撃を減らすことと同じくらい、「衝撃に耐えられる塊茎(イモ)の内部状態をつくること」も大切なんですよ!
皮を剥いて初めて気づく「打撲(黒変)」の発生メカニズム
馬鈴薯の打撲(内部黒変)の厄介な点は、「外見からは正常に見え、皮を剥いて初めて内部の黒変に気づく」ことが多いです。
選果場や加工用イモの受け入れ検査で皮を剥いた際、維管束環の周辺や皮下組織が青黒色〜淡黒色に変色しているのを見て、悔しい思いをした経験がある方も多いはずです。
この黒変は、単にイモが凹んだり傷ついたりした跡ではなく、イモの内部で起こる酸化反応による化学変化です。
打撲(内部黒変)が起こる主なステップ
① 収穫・選別時の衝撃で、イモ内部の細胞膜が物理的に損傷する
② 細胞内に隔離されていたフェノール性化合物(クロロゲン酸など)やチロシン(アミノ酸)が細胞質へ漏れ出す
③ 酸化酵素「ポリフェノールオキシダーゼ(チロシナーゼ)」とフェノール類が酸素の存在下で反応し、褐色〜黒色の色素(メラニン様物質)が生成される


つまり、細胞が損傷しない限り、これらの成分と酵素が出会うことはなく、黒変は起こりにくいと考えられています。
ただし、黒変のしやすさ(感受性)は品種、塊茎温度、乾物率・デンプン含量、成熟度、水分状態など多くの要因によって変わることが研究で示されており、「細胞を壊さないこと」だけが唯一の対策ではありません。
物理対策(落差軽減・緩衝材)だけでは打撲を防ぎきれない理由
生産現場では、打撲対策として以下のような「物理的な衝撃緩和」が広く推奨されています。
例えば、ハーベスターの掘り取り深さを調整して適度な土を乗せる、コンベアの落差部にウレタンスポンジやゴム板を貼る、コンテナの投入時にシュートを使う、といった工夫です。
もちろん、こうした物理的対策は極めて重要で、絶対に怠ってはならない基本作業です。しかし現場を回っていると、これらを丁寧に行っている圃場でも打撲が多発するケースに遭遇することがあります。
公的機関の研究や現場の知見を総合すると、馬鈴薯の打撲発生には以下のような多面的な要因が複雑に絡み合っています。
- 打撲(黒変)を引き起こす5大要因
① 収穫・選別時の物理的衝撃:落差、コンベア速度、機内での衝突圧
② 低い塊茎温度:地温10℃以下での収穫作業は、イモの細胞弾力性が低下して損傷リスクが急増する
③ 乾物率・品種・細胞特性:乾物率(デンプン価)が高いイモや大玉、細胞が大きい品種ほど衝撃に敏感
④ 土塊(クラッド)・乾燥土壌:土壌が乾燥して硬い土塊が一緒にコンベア上を流れると打痕が増加する
⑤ カルシウム・微量要素を含む栄養状態:細胞壁の強さに関わるカルシウムやホウ素の充足度


こうした様々な条件が重なったとき、耐えやすいイモと、損傷しやすいイモに分かれます。
この差を生み出す要因の一つが、イモ自体の栄養状態、とりわけカルシウムの状態だと考えられています。
イモの打撲耐性とカルシウムの関係
イモの細胞を外圧から支えている構造の一つが植物の「細胞壁」です。細胞壁・細胞膜が健全であれば、多少の衝撃があっても内部の損傷は最小限に抑えられやすいと考えられます。
これをわかりやすく人間に例えてみましょう。
骨密度がしっかり保たれている人は、軽く転んだ程度では骨折しにくいですよね。一方、骨密度が低下した状態だと、わずかな衝撃で骨折しやすくなります。要するに、「骨粗鬆症」です。
打撲が多発する馬鈴薯も、これに似たイメージで捉えることができます。外側からいくら衝撃を和らげようとしても、塊茎内部の細胞壁が脆ければ、ちょっとした衝撃で内部崩壊を起こしやすくなるのです。


植物の細胞壁において、細胞同士をつなぐペクチンとカルシウムが結合構造(ペクチン酸カルシウム)を作ることは広く知られています。
海外のウィスコンシン大学の研究(Karlsson & Palta, 2006)では、塊茎中のカルシウム濃度を高めた場合に、品種によって黒変打撲の発生率が低下することが報告されています。
ウィスコンシン大学の3年間の圃場試験では、培土期以降に水溶性Caを分施して塊茎中のCa濃度を高めた結果、一部の品種で打撲黒変の発生が有意に低下しました。
ただし、効果には品種差があり、もともと塊茎Ca濃度が高く打撲の少ない品種では、追加Caによる明確な低減効果は確認されていません。カルシウムは打撲対策の有力な要素ですが、品種、塊茎温度、乾物率、水分、収穫・選別条件とあわせて判断する必要があります。
Karlsson, B. H., Palta, J. P., & Crump, P. M. (2006). Enhancing Tuber Calcium Concentration May Reduce Incidence of Blackspot Bruise Injury in Potatoes. HortScience, 41(5), 1213–1221.DOI: 10.21273/HORTSCI.41.5.1213journals.ashs
また北海道内でも、カルビーポテトと帯広畜産大学による共同研究の公開情報などで、塊茎中のカルシウム濃度(250mg/kg超)と打撲黒変・内部障害の低減を目指す取り組みが報告されています。
この論文はKarlssonら(2006)を明示的に引用しつつ、北海道4圃場で硝酸カルシウム・硫酸カルシウムを試験しています。北海道の試験では、Ca施肥で塊茎Ca濃度が上がる傾向はあった一方、打撲黒変の低下は統計的に明確ではありませんでした。塊茎Caが250 mg/kgを超えなかった点や、土壌条件・施用位置の違いが理由として考察されています。
海外の砂質土壌で行われた研究では、塊茎中Ca濃度を高めることで、品種によって打撲黒変が低下しました。一方、北海道の圃場試験では、Ca施肥で塊茎Ca濃度は増加傾向を示したものの、打撲黒変の低下は明確ではありませんでした。Ca資材は土壌条件、施用位置、塊茎中Ca濃度を確認しながら検討する必要があります。
ただし、研究でも示されている通り、効果には品種差があり、Ca濃度と打撲発生率の関係は「ある濃度域までは改善するが、それ以上は横ばいになる(プラトー現象)」という特性があります。「Caを闇雲に増やせば増やすほど打撲がゼロになる」というわけではない点は、冷静に押さえておきたいポイントです。
打撲対策の基本姿勢
機械の衝撃緩和(物理対策)は土台として絶対に欠かせません。それに加えて、塊茎のカルシウム状態を含む土壌・栄養管理(化学性管理)を見直すことで、打撲リスクをさらに引き下げることが可能です!
土壌のリン酸・カルシウム・pHの関係を正しく理解する



カルシウムが大事なのはわかったよ。でも、毎年のように土壌改良材を入れているし、土壌診断でも石灰の数値はそこそこあるはずなんだ。なぜうちのイモはカルシウム不足になってしまうんだ?



土壌にカルシウムが存在していても、塊茎まで届きにくい場合があります。その背景には、土壌pH、リン酸の状態、塩基バランス、土壌水分など複数の要因が関わっています。一つずつ整理していきましょう!
カルシウムは細胞壁(ペクチン)を支える要素の一つ
馬鈴薯の塊茎が肥大する時期、地下部では活発に細胞分裂が繰り返されています。新しく生まれた細胞同士をつなぎ合わせているのが「ペクチン」という多糖類で、そのすき間にカルシウムイオン(Ca2+)が入り込むことで架橋構造(ペクチン酸カルシウム)が形成されます。
畑作で栽培される作物の中でも、馬鈴薯やアブラナ科野菜はカルシウム要求量が高い作物とされています。
ただし、塊茎は地上部の葉に比べて蒸散量が極めて少ないため、そもそも植物体内でCaが最も移行しにくい器官である点も重要です。土壌中のCa量をただ増やすだけでなく、「どうやって塊茎周辺の根からCaを吸わせるか」という視点が欠かせません。
リン酸とカルシウムの結合は、条件によって働き方が変わる
土壌化学では、リン酸イオン(陰イオン)とカルシウムイオン(陽イオン)が結合しやすい関係にあることは知られています。
中性〜アルカリ性の土壌では、遊離のカルシウムイオンとリン酸が結合し、難溶性のリン酸カルシウムを形成することでリン酸が固定されやすくなります。この場合、リン酸だけでなくカルシウムの一部も同時に土壌中に固定される可能性があります。
一方で、酸性土壌(馬鈴薯栽培でよく管理されるpH域)では、事情が変わります。酸性側ではリン酸は主に活性アルミニウム(Al)や鉄(Fe)への吸着・固定によって利用性が下がりやすく、カルシウムとの結合による不溶化はむしろ中性〜アルカリ性側で問題になりやすい反応です。
つまり、「酸性の畑ほどリン酸とカルシウムが結合してカルシウムが吸えなくなる」という単純な図式は成り立ちません。pHが高すぎても、低すぎても固定化は起こりえます。



ただし、タチが悪いのはpHが低い状況でアルミニウムと結合したリン酸アルミニウムになったとき。これが一番厄介です。


土壌診断で有効態リン酸(トルオーグ法)が基準値(10〜30mg/100g)を大きく超えている圃場では、リン酸の過剰蓄積そのものが養分バランスの乱れやコスト増につながるため、減肥を検討する価値は十分にあります。ただし、それが直接的に「打撲の唯一の真犯人」であると断定できるわけではない点は正しく理解しておきましょう。


そうか病対策の低pH管理とアルミニウムの影響
さらに馬鈴薯栽培を難しくしているのが、「そうか病」を防ぐための土壌pH管理です。
北海道の施肥ガイドでは、馬鈴薯のpHを他の畑作物よりやや低め(そうか病常発地ではpH5.3以下※諸説あり)に管理することが基本とされています。これは、そうか病の発生を助長しやすいpH域を避けるための目安であり、「pHを下げれば発病を完全に防げる」というものではありません。そうか病は、病原菌の種類、土壌水分、輪作、圃場の履歴など多くの要因の影響を受けます。
また、土壌pHが低い状態が続くと、火山灰土壌に含まれる活性アルミニウムが溶け出しやすくなり、これがリン酸を吸着・固定することで、リン酸の利用効率が下がったり、根の健全な伸長が妨げられたりする可能性があります。
酸性条件下でのCa不足は、リン酸との直接結合というより、根の伸長阻害や土壌水分、塩基バランス(加里・苦土との拮抗作用)など複数の要因が組み合わさって起きていると捉えるのが実態に即しています。
土壌医の診断ポイント
酸性の火山灰土壌×リン酸過剰という組み合わせは、Alによるリン酸固定や根の生育阻害、養分バランスの乱れなど複数の課題を抱えやすい状態です。打撲対策としては、土壌条件を総合的に見直したうえで資材選びと施肥設計を行うことが重要です!
ジャガイモの打撲対策に役立つ土壌管理とカルシウム資材の選び方





そうか病を出さずに、カルシウムをイモに届けるなんて、そんな都合の良い方法があるのかい?消石灰や炭カルを撒いたらpHが上がっちゃうし…



そこで現場で検討したいのが「硫酸カルシウム(石膏)」の活用です!炭カル類に比べて土壌pHを上げにくく、純粋なカルシウムを供給できる資材として広く活用されています。
pHへの影響を抑えながらカルシウムを補える「硫酸カルシウム(石膏)」
一般に「石灰」と呼ばれる資材には、炭酸カルシウム(炭カル)、消石灰、生石灰、苦土石灰などがあります。これらはアルカリ分を含んでおり、土壌に投入すると土壌pHをアルカリ側に押し上げます。
馬鈴薯圃場でこれらを大量散布すると、そうか病リスクを高めてしまう可能性がありますよね。
そこで検討に値するのが、「硫酸カルシウム(CaSO4・石膏 / 商品名:畑のカルシウムなど)」です。
- 硫酸カルシウム(石膏)が検討に値する3つの理由
① 中性塩であるため、炭カル・消石灰と比べて土壌pHを上げにくい
② 水への溶解度が比較的適度であり、土壌溶液中にCa2+を放出しやすい
③ カルシウムと同時に「硫黄(S)」も補給でき、タンパク質合成など生育面での役割が期待できる


硫酸カルシウムは強酸(硫酸)と強塩基(カルシウム)からなる塩であり、炭酸カルシウムのようにアルカリ分として働くわけではないため、土壌pHへの影響は比較的小さいとされています。
ただし、「pHに一切影響しない」「そうか病リスクが絶対にゼロになる」と言い切れるものではなく、施用量や土壌条件によって効果は変わります。実際の圃場で使う際は、土壌診断とpHの推移を確認しながら量を調整することをおすすめします。
土壌診断書でチェックすべき項目
手元の土壌診断書を見るとき、まず確認したいのは「pH」「有効態リン酸(トルオーグ法)」「交換性石灰(CaO)」「交換性苦土(MgO)」「塩基バランス」です。
北海道の施肥ガイドが示す畑作物全般の目安は、おおよそ次の通りです(土性によって基準幅が異なるため、あくまで目安として捉えてください)。
- 馬鈴薯圃場における土壌診断項目の見方
・pH(H2O):5.5〜6.5(そうか病常発地では5.5程度を目標にすることが多い)
・有効態リン酸(P2O5・トルオーグ法):10〜30mg/100g(加工用馬鈴薯では30mg以上で減肥・無施肥とする指針もある)
・交換性石灰(CaO):土性区分により幅あり(粗粒質で低め、細粒質・泥炭土で高め)
・交換性苦土(MgO):おおむね25〜45mg/100g(Ca/MgやMg/Kの当量比バランスも確認)
・塩基飽和度:石灰50〜60%程度が目安(苦土・加里とのバランスを含めて総合判断)
特に北海道の畑作では、前作(玉ねぎやビート、小麦など)で投入されたリン酸や加里が残留し、塩基バランスが崩れている圃場が見られます。まずは自分の圃場の土性区分に対応した基準値を、地域の施肥ガイドや農業改良普及センターで確認することをおすすめします。



塩基と呼ばれる石灰・苦土・カリは絶対値よりもバランスが重要です。
カルシウムの施用量と現場でのアプローチ
一般の栽培指導では、カルシウム(石灰)は基準値の範囲内に収めるよう指導されることが多く、これは塩基バランスの崩れやEC上昇、他の養分吸収への影響を避けるための基本的な考え方です。
打撲対策の観点からは、塊茎のカルシウム濃度を高めることが有効な場合があるという研究知見はありますが、一定の濃度域を超えると改善が頭打ちになることも示されています。したがって、「基準値の上限を大きく超えてでもカルシウムを入れるべき」と一律に言い切ることはできません。
硫酸カルシウムを活用する場合、施用時期としては「基肥時」または「培土前」のいずれも一般的でおすすめです。生産者ご自身の作業体系に合わせて、最も効率の良いタイミングを選択すれば問題ありません。
土壌診断のCaO値や塩基バランス、EC、pHの推移を確認しながら、施用量は商品の表示成分と地域の施肥ガイドを踏まえて決めていきましょう。


リン酸過剰圃場を見直す施肥設計|減肥と苦土(マグネシウム)の活用



カルシウムを入れるだけじゃなく、元肥のリン酸自体を見直すのも大事なのはわかった。でも、昔から使っている化成肥料(S004とか)を急に低リン酸に変えて、イモの初期生育やデンプン価が落ちたりしないか心配なんだけど…



その不安はよく分かります!だからこそ、リン酸を見直す際は「苦土(マグネシウム)」や「ホウ素などの微量要素」の状態もあわせて確認することをおすすめします。Mgや微量要素を適正化することで、健全な生育と品質を維持しやすくなりますよ!
S004などの高リン酸元肥から施肥量の見直しを検討する
北海道の馬鈴薯栽培では、長年にわたり「S004(窒素10 – リン酸20 – 加里14)」のような、リン酸成分が窒素より多い山型銘柄が使われてきました。
しかし、土壌中に有効態リン酸が十分に蓄積している圃場では、毎年多量のリン酸を追加投入し続けることが、養分バランスの乱れや無駄な肥料コストにつながる可能性があります。



以前、北海道の春は低温が最大のリスクだったのでリン酸多めの基肥が多用されてきました。でも、最近はどうですか?気候変動に伴って、生産者も手法を変えていかなければなりません。
土壌診断で有効態リン酸が高い圃場では、リン酸の追加施用が増収につながらず、コストだけが増えている可能性があります。リン酸過剰を打撲の直接原因と断定することはできませんが、養分管理を適正化するため、有効態リン酸に応じて施肥量を見直すことが重要です。


苦土(マグネシウム)と微量要素(ホウ素)の役割



それでも初期の生育や品質が落ちたら怖い…。



気が進まないなら無理には薦めません!まず苦土(マグネシウム)や微量要素の状態を確認することをおすすめします。
- 苦土(マグネシウム)の主な役割
① 植物体内の酵素反応(ATPを利用する反応など)に関わり、リン酸を含む養分の利用に間接的に関係する
② 葉緑素の構成元素であり、光合成能力に直接関わる。Mg不足は葉色の低下や光合成効率の低下につながりやすい
Mg欠乏が疑われる圃場では交換性苦土の数値を確認し、不足していれば苦土質資材で補うことが基本的な対応になります。
苦土はリン酸やミネラルのを吸収を促す効果があります。「ただ減らす」のが心配なら「リン酸を減らした代わりに苦土を入れてみる」というのも有効です。
また、見落とされがちですが極めて重要なのが「ホウ素(B)」などの微量要素です。植物生理学上、カルシウムが存在していても、ホウ素が不足していると細胞壁の形成が正常になされません。打撲が多い圃場では、Caだけでなくホウ素の欠乏も疑ってみる価値があります。


ただし、「苦土やホウ素を使えばリン酸を減らしてもデンプン価も生育スピードも一切落ちない」と保証することはできません。養分バランス改善の一環として重要ですが、リン酸減肥の影響を相殺できるかどうかは、土壌条件や品種、気象条件によって変わります。
打撲対策を考えるうえでの施肥設計の視点
これまでの内容を踏まえ、打撲対策を含めた土壌管理を検討する際の基本的な流れを整理します。
- 施肥設計を見直す際の基本ステップ
【ステップ1:土壌診断に基づく現状把握(pHと悩みの明確化)】
まず栽培上の悩みが「打撲」なのか「そうか病」なのかを明確にします。その上でpHを最優先で確認。pHが高くてもそうか病が出ていなければ過度に問題視せず、逆にpHが低く塩基飽和度も低い場合は、そうか病対策はできていてもCa・Mg・K不足で細胞壁が弱くなっている可能性を疑います。
【ステップ2:単肥を活用した養分補給とリン酸見直し】
有効態リン酸が過剰な場合は施肥指針を参考に減肥を検討。Ca不足には硫酸カルシウム、Mg不足には水溶性苦土など、pHに影響を与えにくい「単肥」を必要に応じて施用します。
【ステップ3:肥大期の葉面散布と小面積での効果確認】
生育中に転流を促す目的では、塊茎肥大期に「硫酸マグネシウム」などの葉面散布も有効な選択肢です。資材の変更は小面積で試験施用し、打撲発生率や収量、デンプン価を比較しながら本格導入を判断することをおすすめします。
物理的な機械対策と土壌の化学性管理の両方を見直すことで、選果場での等外品ロスの低減につながる可能性が高まります。
施肥設計のまとめ
土壌診断でpHと塩基バランスを把握し、必要に応じて硫酸カルシウムや水溶性苦土などの単肥を活用。多面的なアプローチでイモの健全性を支えましょう!
まとめ|馬鈴薯の打撲原因を土壌の視点から見直そう



打撲が減らない理由が、機械の衝撃だけじゃなくて土壌や塊茎の栄養状態、pHや微量要素にも関係しているかもしれないというのがよくわかった。まずは土壌診断書を見直して、硫酸カルシウムや苦土の活用を検討してみる!



物理的な機械対策と土壌の化学性管理を両輪で見直すことが、選果場での等外品ロスを減らす近道になります。ぜひ来作の栽培管理に役立ててください!
打撲対策で押さえるべき3つのポイント


- 打撲対策の総まとめ
① 打撲は複数要因の複合現象:機械の衝撃対策に加え、塊茎温度・乾物率・土塊対策、そしてカルシウムやホウ素を含む栄養管理も打撲リスクに関わる。
② リン酸・カルシウム・pHの関係を正しく理解する:リン酸過剰が打撲の唯一の原因と断定はできないが、養分バランスの乱れにはつながる。そうか病対策のpH管理とあわせて、硫酸カルシウムなどpHへの影響が比較的小さい資材の活用を検討する。
③ 施肥設計の見直しと単肥の活用:有効態リン酸が過剰な圃場では施肥指針に基づく減肥を検討し、Ca・Mg不足が疑われる場合は硫酸カルシウムや苦土質資材、肥大期の硫酸マグネシウム葉面散布などで適切に補う。
次のアクション(土壌診断書の確認と関連記事への案内)
この記事を読み終えたら、まず手元の土壌診断書を開いて、pH、有効態リン酸、交換性石灰(CaO)、交換性苦土(MgO)、塩基バランスを確認してみてください。


基準値から大きく外れている項目があれば、それが打撲や品質低下の一因になっている可能性があります。地域の農業改良普及センターや土壌診断機関に相談しながら、圃場に合った施肥設計を検討してみてください。




